ビジネス活用シーン

夢のAI通訳機、「POCKETALK®(ポケトーク)」を通じて
新たなコミュニケーションの世界を開く


執行役員 技術戦略室
シニア製品設計スペシャリスト
川竹 一氏

互いに相手の言語が話せなくても自由に対話ができ、スマートフォンより小さい手のひらサイズの音声翻訳機「POCKETALK®(ポケトーク) W」。2017年に発売された初代モデルからユーザーインターフェース(UI)を刷新、74言語(2018年12月時点)に対応しており、日本語の表示フォントに「ヒラギノ角ゴProN W3」が採用されている。ソースネクスト株式会社の執行役員で、「ポケトーク」の企画設計の責任者である川竹 一氏にヒラギノ採用について話を聞いた。

「ポケトーク」の開発

ソースネクスト株式会社は、パソコンのアプリケーションソフト企画・開発および販売を目的として、1996年8月に設立。Windows用のハードディスク加速ユーティリティソフト「驚速95」やタイピング習得ソフト「特打」などヒット商品を次々と発売し、「筆王」「筆まめ」「宛名職人」といったハガキ作成ソフトの3ブランド合計では70%以上の市場占有率を獲得している。
「ポケトーク」の計画は2001年にさかのぼる。コミュニケーションの障害となっている言葉の壁を乗り越えられるソフトウエアの翻訳機を作れないかと検討。当時はテクノロジー的な問題も含め、お客さまが使えるような価格で良いものを作ることはできないということになり断念した。
「それから時間が経過し、ディープラーニングで翻訳精度もすごく良くなり、スマホが普及したことで通信機器も小さくなって、安くなった。いわゆるIoTですね。そしてグローバルに通信が高速化し、世界中でモバイルネットワークが使えるような状態になりました。そのように条件が揃い、クラウド翻訳機として使えるものを作ろうということで、今回の新モデル開発に至りました」(川竹氏)。

新世代モデル「ポケトーク W」の発売

「2017年に発売した初代モデルによって、たくさんニーズがあり、本当に困っている人がいるということが分かりました。同時に、そこからいろんな要望があり、課題も分かったのです。画面を大きくしてほしいとか、タッチパネルがほしいとか、使い方がややこしいので簡単にならないか、などなど。また、お客さま層の分析としては年配の方も多く、『Wi-Fiって何ですか』という方たちがたくさんいらっしゃいました。そのような声を汲み取って、次は誰でもすぐに使えるものにしようということになりました」と川竹氏は語る。
「ポケトーク W」は、本体サイズは初代モデルと同じだが画面は3倍以上大きくなり、タッチパネルを採用した。グローバルSIMを内蔵し、面倒な設定不要で世界126の国(2019年2月1日時点)と地域ですぐに通信できる。Wi-Fiと4Gに対応した通信で翻訳速度も向上し、言語数は74言語に拡大するなど、見やすさ、使いやすさと共に、翻訳精度の向上も実現した。余分な機能は付けずに、よりシンプルにすることで、初めて会った外国語話者同士がすぐにコミュニケーションできることが「ポケトーク」のゴールだったという。

日本語フォントに「ヒラギノ角ゴ」を採用


本体もソフトウエアも全て一新し、見やすさ、使いやすさといったUIにも工夫が凝らされている。日本語の表示フォントにヒラギノ角ゴを採用したことについて、「もともとフォントは、オープンソースのフォントで検討していたのですが、あまり良くなかった。もっとユーザーが使いやすくなるフォントを採用したいということになり、社長も含め社員に、フォント名を伏せたままパッと画面を見せて選択してもらったら、ヒラギノが1位でした。どうしてこのフォントが良いと思うのだろうと考えたら、みんなだいたいiPhoneを使っている。普段から慣れ親しんでいるということだと思います。これは、UIにとってとても良いことです」
一番苦労した言語については、「やはり日本語ではないでしょうか。日本語は言語としてすごく難しい。ひらがな、カタカナ、漢字がありますし、並びを変えたら読み方が変わりますし、同音異義もある。例えば、『さとう」だけ言われたら、お砂糖なのか、佐藤さんなのかわからない。言語として正しく表示して、正しく発音させるのが難しい。最初の音声認識の段階が間違ってしまうと、翻訳は絶対間違いますから。ですから音声認識には一番気を使っています」

世界中で使われる「ポケトーク」

ボタンを押して話しかけるだけで指定した言語に訳して音声で返してくれる「ポケトーク」は、海外旅行などでの個人利用はもちろん、法人にも業界を問わず好評で、すでに多くのシーンで活用されています。
「ホテルや民泊、それに交通機関などにも採用されています。訪日客に対し、『今日から何語でも対応できます』とアピールしたら、売上が上がるので小売店や飲食店などわかりやすい効果があります。他にも、外国人労働者の方が多い工場で使っていただいたり、企業の海外拠点に滞在されているご家族の方が周囲とのコミュニケーションに使われていたり。あとは学校や、自治体、病院などですね。様々な言語の人が来院しても『どこが痛いです」と説明できるわけです」 「ポケトーク」が一番売れているのは日本で、使われている言語で多いのも日本語だが、次が英語で、中国語、スペイン語と続く。タイ語やアフリカでの使用も多いそうだ。

海外での販売に注力し、言語の壁を越える

多くのメディアに取り上げられ、テレビCMでも話題となった「ポケトーク」だが、今はまだスタート地点だという。もっと気軽に買って使ってもらえるように市場自体を大きくしていくことや、知名度のさらなる向上も必要だと考えている。また、もっと翻訳の精度を上げたり、カスタマイズできるようにしたり、様々な要求に応えながら製品をどんどん良くしていきたいとも。さらに海外での販売についても注力している。
「ヨーロッパでは、自国の言語以外は知らないという人が多いのです。しかし、実は彼らは一週間の生活の中だけでも何言語か自分が話せない言葉と出会って、何とかしないといけない場面があります。隣に住んでいる人とうまくコミュニケーションが取れなかったり、学校の友だちと第二言語で話したりというシチュエーションがいっぱいある。共通言語は英語ですが、お互い片言になってしまうから、状況は日本よりもっと切羽詰っている。だから世界中に『ポケトーク』が広がって、言語の壁をなくすような活躍ができればと考えています。今後もお客様のご要望に応えられるよう製品改良を続け、『ポケトーク』のさらなる普及を目指していきます」

会社概要
ソースネクスト株式会社
住   所:〒105-7133 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター33階
代 表 者:松田 憲幸
設   立:1996年8月
従業員数:単体107人・連結139人(2018年3月31日現在)

 

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